その1 水俣乗越から北鎌のコルへ
その2 北鎌尾根のコルから独標まで北鎌尾根前半
その3 独標から山頂直下のチムニーへ北鎌尾根後半
いよいよフィナーレを迎える。
下のチムニーを這い上がった所から少し登ると、上のチムニーに出る。ここは取り付き場所が少し広いので、引いてデジカメで撮ることができた。
上のチムニーは壁の右側を使って、気持ち良く登ることができた。
登り始めがやや掴みどころがなかったが、一段上がってしまえば、それも解消し、後は力任せに登ってしまえば良い。
独標のトラバースルートの上へ登るチムニーよりは、こちらの方が易しいようだ。
上へ登ってからは、ネットの記録などで「後は、白い杭に導かれ・・・」山頂へたどり着けるような事が書かれていたのを思い出し、あちこち見まわしながら登って行った。
するとすぐに左上の方に、探し物が見つかった。
あそこへ上がり、山頂の祠の横へ登り出れば、北鎌尾根縦走も終わりとなるわけだ。
と言って、別に後ろ髪を引かれることなく、とっとと山頂へ登って行った。ちょうど祠の前でデジカメを撮っている人がいたので、挨拶して山頂へ上がった。時刻は12時、360度ガスで視界は利かず、登山客も他にいない。
しばらくしてN氏が上がってきたので、お互い握手をして、無事登頂した事を祝った。
ときおりガスの切れ間から、肩の小屋が見えたり、大喰岳の方が見えたりした。天気が回復に向かっているのだろうか?
少しずつ山頂に人も増え始め、デジカメで撮ってもらったりした後、山頂を後にして肩の小屋へ下った。
この後気力があれば、南岳まで行ってテン泊しようかと考えていたのだが、緊張感が解けたのだろうか、疲れも出てきたし温泉にも入りたくなったので、N氏と別れ槍沢を下山することに決めた。
皮肉なことに下山を始めると、ガスの切れ間から陽が当たったり、眼下の槍沢の展望がハッキリしだした。
殺生ヒュッテが目の前に見えるのだが、なかなかこのつづら折りの下りをサクサクと下れない。以前、雨の中をヒイヒイ言って登った時の事を思い出してしまった。登っている人にとっては、肩の小屋が見えるのになかなか着かないから、大変だろう。
自分の方は、肩の小屋が混んでいたため、ほとんど休まず下り始めたせいか、疲れが出てきた。
今日温泉に入るなら、どんどん下らなければならないのだが、足はちっとも進まない。
振り返ってみると、雲の切れ間の青空に槍の穂先が突き出ているのが見えた。
殺生ヒュッテに着いたら、一休みしよう。
小屋でペットボトルのジュースを買い、小屋にある景色の良いベンチでお昼にしようとしたが、風が強かったので、小屋の横にあるベンチに移動してバーナーを使ってお昼にした。
靴と靴下を脱ぐと、昨日の雨で濡れたままの足が白くふやけていた。
1時間ほど休息し、殺生ヒュッテを後にした。既に2時を回っている。7時半までに上高地まで下るのは、絶望的だ。それでも、濡れた状態で標高の高い所でテントを張るよりは、できれば徳沢園の草地でテントを張りたいものだ。
長い長い槍沢の下りを歩く。
土曜日のせいか、団体の登山客が多い。挨拶をすると、お隣の国の言葉が返ってきた。海外ツアーで槍ヶ岳登山なわけだ。自分も海外の山へ登ってみたい と思っているが、ヨーロッパや北アメリカなら小屋の設備も良いだろうが、中国や台湾はどうなのだろうか?いずれ機会があれば、是非マッターホルンを登りた い、なぁと。
坊主の岩屋を過ぎ、雪渓を下り、天狗原への分岐を過ぎ、水俣乗越への分岐に到着した。遠い昔のようだ。
足の裏がとても痛く、膝もガクガクニなってきた。ババ平に到着すると、テン場は溢れんばかりのテントで埋まり、どのグループも夕餉を取っていた。疲 れもピークになり、そろそろどこで泊るか考え始めた。この下のテン場は、横尾まで下らなければならない。徳沢園まで行きたいが、横尾についてから考えるこ とにしよう。
ババ平を出発し、槍沢ロッジで一息入れる。小屋泊まりの人たちが、夕食後の夕涼みに外のベンチでビールを飲んでくつろいでいる。もうひと頑張りだ。
槍沢ロッジを出た後、さすがに登って行く人には出会わなかった。二ノ俣、一ノ俣を越え、下り斜面もぐっと緩やかになり、ちらっと横尾山荘がみえたとき、今日はここにテントを張ろう、と即決した(;´д`)。
日没まであまり時間がないので、そそくさとテントを張り、夕食の用意をして食事を取る。お茶を入れて、今日の山行を思い浮かべ、大きな満足感を感じる。雨も降ることなく、屏風の頭の向こうに日が沈み、少しずつ夕闇が迫ってくる。
夜は、カッパを着こむほど寒くはなかった。疲れからか、何度も目が覚めた。翌朝は、4時半に起床、朝食後テントを撤収、上高地に向かった。
この時間に下山する人もなく、もくもくと歩く。途中、以前5月に来た時だったか、猿がいたなぁ、と思いだしていたら、突然音がしたので前方を見ると、何と猿が林道の反対側を歩いてこちらに向かってくる。思わず、身構えながら通り過ごした。
上高地に7:45に到着。バス発着所に行くと、もう直ぐ沢渡行きのバスが出発する。下山届けを出そうと思って行くと、下山届けは出さなくても良い、と書かれていたので、バスの切符を買って乗車、直ぐに出発となった。バスに乗っているのは、わずか5人である。
沢渡に到着後、いつものように温泉に入り、汗を流した。9時前にもかかわらず入浴できたので良かった。
いつかは登りたいと思っていた北鎌尾根であったが、再び挑戦できる日があるだろうか?これからも山を登り続けたいものだ。