先週末3連休の土日を利用して、南アルプスの3,000m峰仙丈ヶ岳、北岳に単独テン泊で行ってきた。記録の方は、機会があれば別に掲載したいと思う。
広河原への入山者は非常に多く、芦安の駐車場、広河原へのバスは大変混雑した。北沢峠から仙丈ヶ岳へは、小仙丈ヶ岳を通る尾根ルートを利用し、仙丈ヶ岳山頂に登ったが、このルートも山頂も賑やかだった。
今 回のハイライトは、仙丈ヶ岳から仙塩尾根を通って野呂川越えで両俣に下降、野呂川左俣の大滝から取り付き、中白根沢の頭への急登、北岳山頂に至るまでであ る。仙塩尾根は長く、途中に小屋もないため一般登山者は入りにくい。また、両俣小屋も野呂川の奥まったところにあるため利用者は他と比べて少なく、しかも 左俣大滝まで繰り返し徒渉があるため北岳に登るこのコースの利用者も、また非常に少ない。今回の山行でも会ったのは、仙塩尾根では二人連れのパーティ1 組、北岳へは自分以外に僅か一人だった。
仙丈ヶ岳山頂には多くの登山者がいたが、仙塩尾根に踏み込む者は自分のみで、ようやく静かな山旅が 始まると思うとワクワクした。大仙丈ヶ岳の岩稜から急激に下り、ハイマツ帯、樹林帯と2700mぐらいから野呂川越え(2300m)までアップダウンを繰 り返しながら少しずつ高度を下げる。高望池までは、最高の尾根歩きだった。
しかーし、高望池から様相が一変、野呂川越えのコル、そして両俣 まで下降するまでの間、コメツガの大木が根こそぎ折り重なって倒れ、細い登山道をふさいでしまっていた。地面をはいずり、藪をこぎ、大木を乗り越え何度も 踏み跡を見失いながらもやっとの思いで野呂川越えまでたどり着いた。登山者の少ないコースなので、整備されるまでにはしばらく(数年)はかかるのではない かと思った。
両俣小屋へは初めて来たが、小屋のおかみさんはよく雑誌などで紹介されている方で、大変良い人だった。というのも、翌日の野呂 川左俣からのアプローチは、先週の雨続きで増水して危険かも知れないし、北岳から誰も下山してきていないので中止した方が無難だと言っていたのだが、夕暮 れ時、北岳から一人下山者があったら、早速テン場の自分のところに来てその人を紹介してくれて、情報を聞き出してくれた。そのとき彼女の左手には、オタマ が握られていたのを自分は見逃さなかった。
翌日は、4時起きで出発準備に取り掛かり、薄明るくなった5時過ぎに出発した。既に他の皆さん は、単独者一人を除いて誰もいなかった。早朝、野呂川の二股を徒渉、一人大きな声で「つめたぁ~」と叫んで渡った。左俣を大滝まで、何度となく渡り返しな がらつめて行ったのだが、ストックを持って行ったおかげで、靴を脱いだのは最初だけで済んだ。
い よいよ大滝2200mから、中白根沢ノ頭2840mまでの急登である。前日の疲れもありペースもなかなか上がらなかったが、中白根沢ノ頭直下に到着すると 視界も開け、ようやくハイマツの入り混じった岩稜歩きとなった。天気は上々、北岳と間ノ岳を結ぶ吊尾根は、穂高岳の吊尾根よりも優しく柔らかに感じた。北 岳を登る多くの人は、東側からのバットレスを見上げる景色を目にするだろう。自分のように西側の景色を堪能できる登山者は、あまり多くないと思われる。 ちょっと嬉しい。
山頂まで登る間、ヘリが何度か頭上を行き来するので笑顔で手を振っていたのだが、翌日新聞を見たらバットレスで遭難者がいたらしく、救助活動中だったようだ。のんきな登山者だと思われたに違いない(^_^)。
肩 の小屋分岐に到着し、いよいよ山頂に到着する。富士山もその黒いシルエットを見せてくれ、仙丈ヶ岳からぐるりと甲斐駒、遠くに八ヶ岳、手前に鳳凰三山やア サヨ峰、間ノ岳と吊尾根、その向こうはよく知らないが農鳥か塩見か。はるか北の方に大キレットと槍ヶ岳のシルエットが見え、北アルプスのそれと認識でき る。北岳は、日本で2番目に高い山3192mである。
下山は、北岳山荘のトラバース分岐から八本歯のコル、大樺沢を広河原1500mまで標 高差1700mを下る大下降である。八本歯のコルまでの途中、梯子の架け替え作業をしていた。標高2900m付近の作業である。しかも多くの登山者が往き 来する。感謝の気持ちを込めて「御苦労さま」と声をかけた。
広河原までは、気力と体力だけの勝負となった。それでも16時のバスに間に 合うようにと、必死に下山した。16時10分前に何とか広河原のバス停に到着したが、すごい人だ。多分立ちっぱなしで1時間揺られるか、乗り切れず17時 発に乗るかというところだろうと考えていた。ところが運が良かった。何と乗合タクシーにスベリ込み乗れたのだ。タクシーのおかげで、遠くに回された駐車場 まで送り届けてくれた。そこは、金沢の湯の下の駐車場だったので、そのまま温泉で汗を流した。
1週間たった今も興奮が醒めず、そして転倒した怪我もまだ痛い。それでも、次の山行に想いを馳せている。