山歩き系

2008-08-13 新穂高温泉から双六岳・笠ヶ岳の稜線山歩その2

1日目へ戻る 新穂高温泉から双六岳

2008/07/13 4:00にセットした腕時計のアラームで目覚める。夜2回ほど目が覚め時間を確認したくらいで、標高2500mにもかかわらず風の音もなく、寒くもなく大 変静かな夜だった。夜明け前にテントをたたむ音や登山道を歩く足音がしていたが、ご来光を拝む登山者だったのだろう。

起床してから朝食、片付け、テントの撤収、パッキングをして行動開始するまでが、朝の第1ラウンドである。本当は、コーヒーなど飲んでまったりとしたいところだが、翌日から仕事のあるリーマンは、山の上でもせかせかとしなければならないようだ(T_T)。

5:00過ぎにテンバを出発し、昨日回り込んできた樅沢岳の巻き道を、南の方へ戻って行く。西鎌尾根から槍ヶ岳へ行く人は、小屋の前から樅沢岳を登って行くことになる。

巻き道から稜線へ出ると、視界が一気に開ける。昨日は見えなかった槍ヶ岳、穂高連峰などスッキリと見える。槍ヶ岳の左側の稜線が北鎌尾根、手前の中 崎尾根が西鎌尾根にぶつかった所が千丈沢乗越、槍ヶ岳右側へ大喰岳、中岳、南岳、キレット、北穂高岳、涸沢岳、奥穂高岳へと続いている。

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笠ヶ岳方面を見ると、青空の中、白と緑のコントラストの稜線が、はるか向こうの方までつながっている。

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今日の午前中、この天上のルートをずーっと歩み続けるわけである。嬉しいけど、下るころはヘトヘトであろうことが、頭をよぎった。

あちらこちらを、デジカメで写しながら進む。人一人通らない。1時間ほどで、昨日、鏡平から上がって来たときの分岐点に着いた。

そこから10数分で弓折岳である。稜線左側に、ちょっとしたピークがある。これがその弓折岳ではないかと思い、ハイマツの藪の中へ踏み込んで見る。 人の歩いた後はあるが、ピークへ取り付く踏み跡が見当たらない。無理やり登ろうとしたが、時間が気になったので止めた。その後稜線へ戻ると、右側にもう1 つのピークがある。上がってみると三角点があった。こちらがそうなのか?

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さらに先へ進む。下りに入る。大ノマ乗越の鞍部への下りである。階段などがあり登山道は整備されている。

大ノマ乗越の鞍部は、テントが設営できるような場所である。木の標識は朽ちて倒れており、弓折岳と笠ヶ岳の矢印が鞍部に寝かされていた。

右側の緩い斜面には樺の木であろうか、白い幹の低い木が斜面に生えている。全体的に優しく明るい雰囲気のあるところだ。

いよいよ登り返しである。下の写真のように、稜線に雪渓が残っており、登山道が半分以上隠されているため、雪渓上を登って行くのだが、これが結構長くて大変だった。

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天気が良かったので、お日様の反射で眩しかったり暑かったり、足を取られたりした。この先に、頭が平らなピークが見える。大ノマ岳であろうか、そこで休息することにした。

時刻は7:30、小腹が空いてきたので軽い食事をすることにした。

食事をしていると突然、鈴の音が聞こえ秩父平の方から年配の夫婦の方が登ってきた。本日最初の人との遭遇である。笠ヶ岳山荘から来た人たちのようだ。挨拶を交わし、鏡平を下るとのこと、早々に去って行った。

こちらも出発、いよいよである。ようやく、笠ヶ岳が稜線の一番端に見えるようになった。あそこまで行くには、写真の右手下方、秩父平まで下降、その後は登り返しとなる。

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秩父平まで下る途中で、数パーティの登山者とすれ違った。皆、笠ヶ岳山荘から出発した人たちなのだろう。秩父平に到着し、雪渓を登る準備をしていると次から次と登山者が下降して来る。急な所が45~55度くらいの角度の雪渓で、下降点からロープが張られていた。

その一段下の雪渓は、斜めにトラバースしながら下ってくることになる。

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中には単独行の方もおられ、明らかに雪渓に不慣れな人もいると見えて、年配の登山者の方が心配して、下方で準備している自分に声を掛けて来て、「注視して欲しい」などのお願いまでされてしまった。

取りついてみると、雪は腐ってはいるが、ステップを切っていけばそれほど問題ない。上の段に着くと、ロープの下方で中高年の団体の女性陣が、黄色い声を上げながらシリセードしている(;´Д`)。

上の段は少々角度があるが、3分の1ぐらいまで夏道が右側に出ていたのでそちらを登り、途中からロープで下降しているところまで雪渓をトラバースし て、後はキックステップで直登して行く。跳ね上がったシャーベット状の雪が腕や顔に飛び跳ね、冷たくて気持ちが良い。一気に高度を稼ぎ稜線まで上がった。

その後、登山道はしばらく上方へ続いてゆく。途中、ピヨピヨ鳴き声が聞こえたので、もしやと思ってみたら登山道に親のライチョウ、ハイマツの中に雛がいた。久しぶりにライチョウを見た。

そして秩父岩の上方まで登ってくると、左手から回り込んだ稜線が真っ直ぐ進み、少し左上へ向けてその先の笠ヶ岳まで続いて行く。この稜線山歩はすばらしい。標高は、地図から見るとおよそ2700mぐらいだと思われる。

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抜戸岳から笠新道の分岐があり、そこから新穂高温泉に下るのだが、天気が悪かったり、疲れたらサッサと下ろうかと考えていた。が、この景色を見てしまったら、何としても笠ヶ岳の頂上を踏みたいと思った。

稜線を進んで行くと、左手に抜戸岳ピークへの標識があったので立ち寄って行くことにした。

9:20 あまり人気のない場所なのだろう、はっきりしない踏み跡をたどってピークに着いた。登山道からとの標高差はそれほどない。眺めは良い、と言っても今までも そうだが、どこもかしこも良いので、特別良い、という訳ではない。しかし、もし笠新道を登ってここに到着したら、とても素晴らしい景色に会えることにはな る。

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少しガスが出てきたので急ぐことにする。抜戸岳の少し先に、新穂高から登ってくる笠新道との分岐点があった。その標識にザックが2つデポされてい た。どうやら、双六小屋のテンバを暗いうち出発した二人組パーティの物のようだ。自分も水をフリースに巻き込み、腰に巻きつけ、ザックをデポして笠ヶ岳ま で往復することにした。

時刻は9:45、往復で約2時間だから12時頃に戻って来れればいいだろう。その後4時間で林道まで下り、駐車場には5時頃の到着になるだろうか。などと考えながら、身軽になったので軽やかに進み始める。

すぐに、ザックの持ち主と思われる二人組と遭遇する。軽く挨拶を交わしすれ違う。

さらに進み、途中、岩の間を抜ける。どうやらこの抜戸はこの岩から来た名称のようだ。

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身軽なのでどんどん進む。視界には、名前の由来からくる笠の形をした笠ヶ岳が、ハッキリと見えるようになった。その手前鞍部には、笠ヶ岳山荘も見える。

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登りが少しきつくなり、小屋の下部は雪渓を登り、小屋の手前でハイマツ帯に入って物置小屋の所に出た。

登山者はすべて小屋を後にしたのだろう、小屋の玄関前のベンチで小屋の人たちと思われる方々が談笑している。軽く挨拶をして、そのまま笠ヶ岳山頂へ向かう。

小屋からは、ガレてはいるが頂上へは登りやすいように登山道が整備されている。

11:00 笠ヶ岳山頂に到着。頂上は東西に細長く、どうやらこれが下から見ると笠の平らな部分に見えるようだ。

天気も見晴らしも良く、登山客は自分一人、昨日に続き一山貸し切り状態となった。虫がぶんぶんと五月蠅いが、思わず横になってくつろいでしまった。

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楽しいひと時を過ごすも、西の方から大分雲が広がってきたので、お暇することにする。小屋まで下り、良く冷えた野菜ジュースを買って飲み、足早にザックの所まで戻る。途中、単独の登山者と2回すれ違った。

12:10 ザックをデポした分岐まで戻り、荷物をまとめ下降の用意をする。これで稜線散歩の旅とお別れだ。分岐を抜戸岳の尾根筋まで乗越し、杓子平目指して下降する。少し雲が広がってきたかなと思ったら、杓子平手前の雪渓の下降で雨が降り始めた。

杓子平は、稜線から一段下降したなだらかな広い地帯で、とても気持ちのいいとこなのだが、落雷にあってはかなわないので、とにかく足早に笠新道の急坂な下りに向けて進んで行く。風があまり吹いていないので、折りたたみのカサを広げた。

笠ヶ岳でカサ、どうも失礼しました(;´Д`)。

笠新道の急坂をつづら折りに下る。足にくるし、水も残りわずかとなってしまい、なるべくゆっくりと進む。14時ぐらいだっただろうか、登って行く単独行の人とすれ違った。少し驚いた。

下降するほどガスも薄くなり、雨も上がった。ようやく、向かいの中崎尾根の稜線より下になり、沢の勢いよく流れる水の音が大きくなってきて、沢の白い河床がハッキリとみえるようになった。

15:50 昨日、左手に見送った笠新道の入り口に降り立つ。昨日は水場があることに気が付かなかったのだが、すっかり水を飲みほしていたので、思いっきり水分を補給する。そうしていると、ワサビ平の方から中高年の男女の団体が立ち寄って来て、写真を頼まれた。

話しを聞くと、昨日、この笠新道から登り、今、鏡平から降りて来たという。どうやら、秩父岩の雪渓で、シリセードしていた方々のようだ。早々に分か れ、駐車場までの林道歩きをもくもくと進む。途中、「お助け風穴」だったと思うが、冷気が噴き出してくる岩穴があった。昨日歩いているときは、全然気付か なかったのだが。

16:40 登山センターに到着、下山報告を投函。16:50 駐車場に到着。1泊2日、稜線山歩の旅の終わりである。この後、新穂高方面に来るといつも立ち寄る「ひらゆの森」で汗を流す。増築して新しくなっていたの で、少し戸惑った。本当なら飛騨牛の焼肉定食を食べたかったのだが、一人では寂しいので止めた。今度はどこへ行こうかな?


双六小屋テンバ出発(5:15)-鏡平分岐(6:10)-大ノマ岳(7:30)-
抜戸岳(9:20)-笠ヶ岳(11:00)-新穂高分岐(12:10)-杓子平(13:10)-
林道笠新道入口(15:50)-新穂高温泉無料駐車場(16:50)