山歩き系

2009-07-11 針ノ木雪渓を登り針ノ木岳から種池小屋までの稜線を縦走

本州上を日本列島に沿って停滞していた前線が、金曜日の予報で前線が南下して一時的に天気が回復するというように切り替わった。この梅雨の時期チャンス、とばかりに針ノ木を目指すことにした。

針ノ木岳から左手黒部の谷を挟んで立山連邦の立山や剣岳を見ながら種池までの縦走は、穂高連峰や槍ヶ岳を望みながらの蝶ヶ岳から常念岳への縦走に似ている。異なるのは、有名な針ノ木雪渓を登り詰めることであろうか?雪渓歩きは、もちろん今回の目的でもあった。

悩んだのがテン泊か日帰りかである。扇沢駐車場から出発して針ノ木雪渓を登り詰め、針ノ木岳、スバリ岳、赤沢岳、鳴沢岳、新越乗越山荘を経て岩小屋 沢岳、種池山荘から扇沢駐車場への下降と、コースタイムは15時間、それより早く歩けても12時間はかかると思われる。しかしながら、今は梅雨の時期でも あるので、思い切って日帰りすることを決意した。

金曜日の夜、午前0以降に豊科ICを降りるように出発した。ICを出て大町から扇沢へ向かう大町アルペンラインへ入って、扇沢まで数キロ手前で思わ ぬ事態に出くわした。工事のため5時ころまで通行止めだとのこと。仕方ないので路肩に車を寄せて解除されるまで仮眠することにした。2時頃窓ガラスをノッ クする音に起こされ、工事が終わったので通行止めを解除すると伝えられた。扇沢の下の無料駐車場に停車し、4時半まで再び仮眠した。

工事は夜の8時くらいから始まり、12時前に通行を一旦許可し、再度通行止めにしているようである。この時期行かれる方は、確認して行かれることをお勧めします。

4時50分に駐車場を出発、トロリーバスがくぐるゲート左側に登山道入り口がある。

大沢小屋までの登山道は、針ノ木雪渓からの沢を鳴沢岳側に大きく迂回するように高巻き、鳴沢、赤沢を越えて針ノ木雪渓方面へ続く。

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小1時間ほどで大沢小屋に到着、梅雨の時期登山客は見られず、人気がなく静かだった。

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小屋を過ぎて30分ほど過ぎるといよいよ雪渓が見え始めた。取り付きはもう少し上方となる。

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支度をして、いよいよ雪渓に降り立つ。上方、針ノ木峠の稜線はまだ雲の中である。

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末端を振り返ってみた。南側は雲が取れ、青空がのぞき始めている。

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1時間少し登り詰め、雪渓上部に来ると斜度もきつくなり、アゴが上がってしまったので一休みすることにした。雪渓の取り付きで後ろから来ていた自分より年上と思われるおじさんが、通り抜けて行った。

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下方を振り返れば雲は切れ、稜線が姿を見せ始めている。どうやらこのまま進むことができそうだ。

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雪渓上部の最後は、右側の地が露出した方へ雪渓を離れ、水分でぐずぐずになった地面をつづら折りに登り詰めて、針ノ木小屋のある針ノ木峠へ登り詰め た。雲は切れ、小屋の向こうには槍ヶ岳と思われる穂先が望めた。さっきのおじさんは、そそくさと蓮華岳の方へ登って行った。きっと、コマクサを写真に収め るためだろうな、と勝手に推測した。

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針ノ木岳に向かう急登途中から小屋の方を見た。上部の雪渓の斜度はかなりきつく見える。

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途中雪渓をトラーバスしたり、登ったりしながら1時間ほどで針ノ木岳山頂(2820m)に到着。山頂部から蓮華岳方面を見た図である。ここまでの雪 渓はアイゼンが必須である。自分は6本爪の軽アイゼンを利用したが、下降も考えるなら8本爪以上でも良いかもしれない。ゴムバンドで絞めるような軽量ワン タッチのものは、止めた方が無難だろう。

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眼下には、抹茶ミルクのような色をした黒部湖が見えた。流木と思われる部分が、茶色く変色している。西側の立山連邦は、残念ながら山頂部が雲に覆われハッキリとしない一日だった。

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いよいよ本日のお楽しみ、稜線歩きである。2800mから下り、2600mと2400mのアップダウンを繰り返す。ありがたいことに雲は切れ、稜線 がハッキリと見える。が、今日一日、時間ばかり気になった。一つは天候が崩れないうちに早く通り過ぎたいということ、もう一つはヘッドランプを付けるよう な暗くならないうちに、早く下りたいという気持である。

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針ノ木岳からスバリ岳までは岩や岩屑がゴロゴロしており、お花畑は楽しめなかった。わずかに咲いていた花を見つけて、デジカメに収めた。ところで、自分は高山植物の名前についてはサッパリである。何て言うお花なのだろう?

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スバリ岳山頂(2752m)へ到着。針ノ木岳を振り返って見る。このスバリ岳とともに、岩肌の露出した山稜である。なお、稜線上は黒部湖側から風が始終吹き付け、Tシャツでは少し肌寒かったので長袖を上に着た。

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スバリ岳から向こうは、稜線が優しい姿で緑も目について雰囲気が変わる。

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相変わらず眼下に黒部湖が見える。赤沢岳へ向かう途中目を向けると、黒部平から大観望へのロープウェーの駅が見える。黒部湖右端は、ダムのトンネル 入り口であろうか?観光船も行ったり来たりしている。しばらく進むと、反対側からの縦走者に出会った。小学生を連れた親子で、2時に柏原新道から登り始め たとのこと、自分が本日初めて出会った登山者らしい。子供はへたった様子もなく、この長い山中を登下降するとは大したものである。

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親子と別れ、しばらく進んでから赤沢岳の方を見る。

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赤沢岳(2677m)に到着、周りの岩くず全体が赤みを帯びている。振り返ってみた針ノ木岳は、大分遠くなったことを感じる。

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立山や剣岳は、残念ながらその姿を望むことはできないが、内蔵助平のくぼ地が見える。真砂岳から内蔵助山荘を経て内蔵助平へ降り立った昔を思い出した

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鳴沢岳方面は、緑が一層濃くなる。

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鳴沢岳山頂(2641m)へ到着。途中で、黒部ダム建設のために山をくり抜いたトンネルの上をまたいだことだろう。あの破砕帯で山は崩れないのかな、なんて方に考えが行ってしまった(^_^;)。

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新越乗越山荘は、手前のピークに隠れているのだろう。その先が本日ラストの岩小屋沢岳である。あれを越えれば、種池山荘を経て下降を残すだけとな る。ところで、針ノ木岳から種池山荘の方へ進んで行くと、どの山も山頂へは緩やかに登り、下降は急激なガラガラの岩場を下る事が多い。特にここの下りはき つかった。

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新越乗越山荘には13時に到着した。出発して8時間を過ぎたのでさすがにへばって来た。限界が近づいて来たのが分かる。宿泊したいなぁ、なんて。でも景気が悪くてフトコロ寂しいし(T_T)。

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山荘からは剣岳が正面に見えるようだが、休息場所からは見えなかった。反対側を見ると、はるか大町の方まで見通せた。

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しばらく休憩した後、いよいよ最後のピークへ向けて出発する。体は疲れ足取りは重いが、気持の方はフィナーレに向かって割と軽やかだ。剣岳は相変わらず雲の中、次はあそこに登りたい。

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岩小屋沢岳へ続く稜線と山頂まで伸びる登山道を見て、そう言えば今までもそうだが、どこかで似た景色を見た覚えがあることに気付いた。そうだ、去年行った笠ヶ岳へ伸びる稜線に似ているんだ。

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岩小屋沢岳山頂(2630m)に着いた。緩やかなピークだった。

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フィナーレに近づき、高山植物をデジカメに収める気持ちに余裕も出て来たようだ。お花畑の向こうは、蓮華岳だろうか?

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稜線からの別れを惜しみつつ、高山植物をデジカメに収める。お花の名前はサッパリ分からない。

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とうとう最後の目的地、種池山荘が見えた。赤い三角の屋根に白い壁が印象的だ。

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棒小屋乗越から稜線に残った雪渓を歩き、キャンプ指定地を抜けて種池山荘に到着した。途中上り坂には、お花が続いていた。種池は水が満水のようだ。

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土曜の15時を過ぎている が、キャンプ地には一張りのテントもなく、山荘にも残照の景色を楽しんでいる登山客はいない。梅雨の僅かな晴れ間のためか、人影の少ない山歩きとなった。 爺が岳の優しい姿が望める。到着したときは、小屋の人たち2,3人が外で作業をしていたが、登山客を迎える準備や夕餉の支度のためか、皆さん小屋の中へ 戻ったようだ。

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山小屋の前から、今日一日を 振り返ることができた。時間とともに進む先々の雲が切れて行き、時折夏の日差しが照りつけるが、ほとんど上空の雲のおかげで暑くはなく雨にも降られず、素 晴らしい山行を楽しむことができた。人にほとんど出会わず、連なる山々を踏みしめて行くことは、本当に楽しいものだ。時折ドキドキする場面もあったり、痛 い思いもしたが全てが満足感に置き換わった。

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種池山荘からの下りは、足を 引きずるような感じで下って来た。1000m以上の下りではあるが、柏原新道は傾斜がきつくなく、登山道整備に力を注いでいるため大変歩きやすい。登りは 少々長いかもしれないが、上部では雪渓をトラバースしたりなど登山入門者の人にも楽しめる登山道だ。

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この後、車が通るアルペンルートを駐車場まで15分ほど歩き、本日の全工程を終了した。昼間は賑わったであろう扇沢も、18時を回り人影は見られずひっそりとしている。家族にメールし、帰り掛けに薬師の湯で汗を流し帰路についた。

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扇沢駐車場(4:50)ー大沢小屋(6:05)ー針ノ木峠(8:36)ー針ノ木岳(9:40)ースバリ岳(10:25)ー
赤沢岳(11:40)ー鳴沢岳(12:30)ー新越乗越山荘(13:00)ー岩小屋沢岳(13:55)ー
種池山荘(15:10)ー柏原新道登山口ー(17:55)ー扇沢駐車場(18:10)