前穂北尾根越しに穂高連峰からキレットを越えて槍ヶ岳を眺望することができる、大変素晴らしい景色を堪能できるのがこの蝶ヶ岳から常念岳への稜線だ。ルートは上高地から長塀尾根を登る人が多いようだが、マイカーでグルリップとなると三股から入ると良い。ところで穂高連峰を挟んで正反対からは、双六岳、笠ヶ岳の稜線から滝谷などの穂高連峰、槍ヶ岳を眺望できる。以前の記事ですが参考までにどうぞ。
2008-08-13 新穂高温泉から双六岳・笠ヶ岳の稜線山歩その2
さて三股の駐車場へは、早立ちをしたかったので前の晩に来て車中泊とした。連休とあって多くの車が駐車していたが、十分広いので溢れる事はなかった。
翌朝5時に起床、5時半に出発し、25分ほどで指導所に到着。計画書をおじさんに手渡し、常念からの下りは山小屋で情報を仕入れるようにアドバイスを受ける。
右に常念岳へのルートを分け、つり橋を渡って蝶ヶ岳へのルートを進む。ここからはもう雪道となった。連休前までは天候が安定せず寒い日が繰り返しあったせいか、今年はしばらく残雪が続きそうだ。
途中明るい枯木立の雪の登山道を抜け、まめうち平へ続く尾根へ取り付く。雪に覆われた笹藪や尾根を急登し8時20分にまめうち平へ到着する。
まめうち平からしばらく樹林の山道を進む。苦しい山登りの中で、ここの樹林帯歩きはとても気持ちが良い。もっとも、ここからはヒーヒー言って登る事になるのだが。
ルートを進行方向右手(南西)に向け、蝶沢の上部へ斜度を増して登って行く。9時30分蝶沢のトラバース地点を越えて休憩する。急な斜度なので、木の根元の近くで斜面によりかかるように休息した。
ここからの登りは、それまでより遥かに厳しい。小さなワンタッチ軽アイゼン(6本爪でないモノ)の登山者がいたが、スリップを繰り返してかなり苦しそうだった。上部がだんだん明るくなり急登の樹林帯を抜けると、いよいよ稜線が近づいてきたようだ。
最後の登りをこなし緩やかな窪地を登り詰めると、蝶ヶ岳ヒュッテのある稜線に11時35分に到着した。早々にテントを張り、とにかく体を休める事にした。お楽しみの景色は後回しにし、テントの中で昼食を取って、その後ひと眠りすることにした。日差しのお陰でテントの中は暖かく、14時過ぎまでお昼寝タイムとなった。
夕食まで時間もあるので山上の散歩とする。テン場の近くの丘に標識が立っており、どうやらここが山頂のようだ。
標識の右側は前穂北尾根とピークが前穂高岳、左に明神岳が連なり上高地へ落ちて行く。さて、これが見たかったという穂高岳連峰と槍ヶ岳。
左側手前が前穂、右に奥穂、涸沢岳、北穂、キレット、南岳、中岳、大喰岳と続き右端が槍ヶ岳。画像ではわからないが、槍ヶ岳のカールには肩の小屋まで一直線にトレースが付いている。しばらく景色を楽しみ、テントに戻り5時に夕食を取った。
本日の出費は高速料金1,000円の他、テン場の料金500円を支払い、水1リットル150円で2リットル補給したのが全部である。また、常念岳から前常念、三股への下りについてヒュッテで尋ねると「ここは関係ないので常念小屋で尋ねるように」とのこと。まぁ、こんなところでしょう。
翌朝は3時30分起床、朝食を取ってテントを撤収、5時過ぎに出発した。横から霞み雲を通して射す柔らかい陽光の中、6時05分蝶槍に到着。本日目指す常念岳へのルートと常念岳が一望できる。
蝶槍を一気に下降、登り返して樹林帯から抜け出た所で振り返ってみると、蝶槍のピークが角のようにチョコンと突き出していた。
常念岳へ登りの途中、声を掛けた登山者が偶然、昨日三俣から登ってきたということで話を聞く事ができた。お陰で心配が減り気が楽になった。山中で困るのが道迷いだ。特に雪山は、トレースがないと笹藪ひとつ踏み間違えただけで迷子になる。しかし彼らの踏み跡が残っているということで、ホッとしたわけだ。
稜線上最低のコルから常念岳山頂2,857mまで、およそ400mを登り返して9時30分常念岳の山頂に立った。正面には槍ヶ岳、北に目を転ずると大天井岳、その右側は立山だろうか、左側はハッキリとわからないが野口五郎岳、真砂岳、水晶岳が連なっていると思われる。
下降ルートの前常念岳の方へ目を向けると、遥か霞んで左側が八ヶ岳、右側に南アルプスが見える。富士山は残念ながらよく分からなかった。
陽は高く、ギラギラと雪上を照らし、紫外線が強いのが感じられる。日焼け止めをたっぷり塗り、スキー用のサングラスをしているが、それでも下山後目が痛く日焼けもした。
さて、いよいよ山頂ともお別れだ。雪の細い稜線を下り、前常念岳の手前で一休み、縦走した稜線をもう一度眺めた。また訪れる事ができるかわからないのだから。
前常念岳から樹林帯までの急な岩場を下降し、樹林帯に入って11:30分昼食を取る。持って来たおにぎりはボロボロで、スープでお腹に流し込んだ。12時30分頃尾根から右の山腹を三股へ下る下降ルートに移った。
このルートはところどころの木に赤いペンキなどで目印があるのだが、雪に隠された登山道は判然としない。急な下りに夢中になっているとロストしてしまうので、注意が必要だ。幸い、トレースがある程度見わけが付いたので無事に下って来る事ができた。
30分おきに休息を入れ、13:30分最後の休息を取る。既にアイゼンは外し、ピッケルもザックに括り付けてある。ほどなく沢に合流し、顔を洗って汗を流す。(次の画像はおまけ)
14時過ぎ駐車場へ戻り、途中ホリデー湯四季の郷で風呂に浸かった。連休中とありイモ洗いのようだった。帰りの道路や高速もあちこち込んでいて、久しぶりに「少しは景気が良くなってきたのかな」と、変な実感をした次第だ。